社内マニュアルの作り方|7項目の型・書く順番・更新が止まらない運用
「マニュアルを作ったのに、結局その人に聞いている」。使われないマニュアルには、書いた人の頭の中の前提が抜けている、作った時点で完成扱いになり直されない、という2つの共通点があります。この記事では、社内マニュアルに入れる7項目の型、途中で止まらない書く順番、「1手順1動作」の直し方、所有者と確認日で更新を止めない運用、Word・表計算・社内Wikiの置き場所の使い分けを、人事・バックオフィス担当者向けに整理します。
社内マニュアルとは、何を書くものですか?
担当者が変わっても同じ結果が出るように、業務の手順・判断基準・例外を、読んだ人が迷わず動ける形で書いた文書です。「知っている人が説明する」を「読めば分かる」に置き換えるのが目的です。
- 社内マニュアル(業務マニュアル)
- ある業務を、初めて担当する人でも一定の品質でこなせるように、目的・前提・手順・判断基準・例外・問い合わせ先をまとめた文書。個々の操作を順に書いた「手順書」より広く、なぜその手順なのか、迷ったときにどちらを選ぶかまで含む。社内Wikiに置く場合は、日々の管理表とリンクし、所有者と確認日を持たせて更新を続ける。
マニュアルが「作ったのに使われない」のは、大きく2つの理由があります。1つは、書いた人の頭の中にある前提が省かれていて、読んだ人が動けないこと。もう1つは、作った時点で完成扱いになり、業務が変わっても直されないことです。この記事では、前者に対して「7項目の型」と「書く順番」、後者に対して「更新が止まらない運用」を扱います。
読み手は誰かを最初に決めます。新しく入った人が頭から読む教科書なのか、経験者が業務中にピンポイントで探す辞書なのか。社内マニュアルの多くは後者で、だからこそ検索と目次、1ページ1トピックが重要になります。
マニュアルに入れる7項目は何ですか?
目的、対象者と前提、手順、判断基準、例外とやってはいけないこと、使う道具と置き場所、更新履歴と管理者の7つです。初版は1項目1〜2行で十分で、手順と判断基準から埋めます。
| # | 項目 | 書くこと | 初版の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 目的 | この業務が誰のために・何を達成するか。「〜を管理する」ではなく「〜が〜できる状態にする」 | 1〜2文 |
| 2 | 対象者と前提 | 誰が、どの権限で、何を準備してから始めるか(アカウント・承認・必要な情報) | 箇条書き3〜5行 |
| 3 | 手順 | 番号付きで、1手順1動作。画面名・ボタン名・入力値をそのまま書く | 本体。省略しない |
| 4 | 判断基準 | 迷ったときにどちらを選ぶか。金額・件数・日数などの線引きは数字で | 「〜なら A、それ以外は B」を2〜3個 |
| 5 | 例外とやってはいけないこと | 過去に起きた間違い、例外時の連絡先、絶対にしない操作 | 1〜3個 |
| 6 | 使う道具と置き場所 | ツール名、管理表やファイルの場所。「共有フォルダ」ではなく、たどり着けるリンク | リンクの列挙 |
| 7 | 更新履歴と管理者 | 所有者(従業員)、最終確認日、次回確認日、変更の履歴 | 所有者と確認日だけでも可 |
7項目のうち、現場が最初に必要とするのは3(手順)と4(判断基準)です。1・2・7は管理用の欄で、初版は1行ずつで足ります。逆に、7の管理者が空欄のマニュアルは、誰も直さないまま古くなります。所有者の欄は、後回しにせず初版から埋めてください。
どの順番で書けば、途中で止まりませんか?
手順 → 判断基準 → 例外 → 目的と対象者 → 管理者、の順です。目的から書き始めると、書きたいことが多くて手順にたどり着く前に止まります。
マニュアル作成が止まる典型は、「はじめに」と「業務の全体像」に時間をかけすぎて、本体の手順が書かれないまま下書きが残るパターンです。読む人が最も必要としているのは手順なので、まず手順を番号付きで書き切ります。書きながら「ここは金額によって違う」「この場合は例外」と気づいた点をメモし、あとで判断基準と例外の欄に移します。
手順を書き終えてから、目的と対象者を1〜2文で足します。手順を書いた後なら、「この業務は誰が何をできるようにするためか」が具体的に言えるはずです。最後に、所有者と次回確認日を入れて公開します。完成度は7割で構いません。公開して質問が来た箇所を直す方が、完璧を目指して公開しないより早く使えるマニュアルになります。
書く人は、その業務を実際にやっている人です。人事や総務が全部門のマニュアルを代筆すると、前提が抜けます。人事の役割は、7項目の型と置き場所を決め、所有者と確認日の欄を用意し、初版を7割で公開してよいと伝えることです。
「1手順1動作」で書くとは、どういうことですか?
1つの番号に1つの操作だけを書き、「確認して登録する」のような2動作は2つの番号に分けることです。画面名・ボタン名・入力値は、読む人がそのまま探せる表記で書きます。
| 読みにくい書き方 | 1手順1動作に直した書き方 |
|---|---|
| 入社者の情報を確認して、名簿に登録する | 1. 内定者一覧で、入社日が今月の行を開く 2. 氏名・入社日・所属を、雇用契約書と照らして確認する 3. 「従業員に登録」を押す 4. 登録後、名簿で所属部署が入っていることを確認する |
| 必要に応じて情シスに依頼する | 5. PC・アカウントが必要な場合は、「社内依頼受付」フォームから申請する(判断基準: 入社日の10営業日前まで。過ぎていれば情シス担当に直接連絡) |
| あとは通常どおり | 6. 入社準備の管理表に行を追加し、担当者を名簿から選ぶ 7. 状態を「準備中」にする |
「必要に応じて」「適宜」「通常どおり」は、書いた人にだけ意味が分かる言葉です。読む人が判断できるように、条件を数字や具体的な状態で書き、判断できないなら誰に聞くかを添えます。スクリーンショットは、ボタンの位置が分かりにくい箇所だけで十分です。画面が変わるたびに差し替える負荷を考えると、文字で探せる表記(ボタン名をそのまま書く)を優先します。
手順の中にチェックリストを組み込むのも有効です。「確認する」で終わる手順は、確認したかどうかが残りません。チェック項目にしておけば、作業者自身の抜け漏れ防止になり、引き継ぎのときに「どこまで終わったか」が伝わります。
マニュアルが古くならない運用は、どう作りますか?
ページごとに所有者と次回確認日を持たせ、確認日が来たら所有者に通知が届き、質問が来た箇所をその場で直す、の3つです。年に1回の総点検より、月1回の小さな確認が続きます。
マニュアルは書いた瞬間から古くなり始めます。業務が変わるたびに直す仕組みが無いと、「ここは古いかもしれない」と読む人が疑い始め、疑われた時点でマニュアルは使われなくなります。直す仕組みは、所有者と期限を「人」と「日付」で持たせることです。
- 所有者: 役割名(「人事担当」)ではなく、名簿上の人にします。異動・退職があれば、その人が所有者だったページを一覧で洗い出し、引き継ぎます
- 次回確認日: 業務の変化頻度に合わせて1〜6か月後にします。確認日が来たら所有者に通知が届き、「まだ正しい」なら日付を先に送るだけで済みます
- 質問が来たら直す: チャットで「〜はどうすれば?」と聞かれたら、答えると同時にマニュアルの該当箇所を直し、リンクで返します。質問は「マニュアルの足りないところ」の通知です
- 正本を1つにする: 同じ手順が複数の場所にあると、片方だけ直されます。マニュアルは1か所に置き、他の場所からはリンクで参照します
- 月1回の棚卸し: 半年以上更新の無いページを一覧にして、所有者に「まだ使っているか」を確認します。使っていないページは、削除ではなく「アーカイブ」に移します
この運用を回すには、マニュアル自体を管理表(データベース)の行として持つと楽になります。「マニュアル一覧」というデータベースに、題名・所有者・対象部署・最終確認日・次回確認日の列を持たせ、各行のページ本文がマニュアルになる形です。確認日順に並べれば、今月確認すべきマニュアルが一覧で分かります。データベースの意味は 用語集 にまとめています。
Word・表計算・社内Wiki、どこに置くべきですか?
探して・直して・リンクする前提なら社内Wiki、印刷して渡す前提なら Word、チェックリストとして配るなら表計算です。社内で日常的に参照するマニュアルは、Wiki に置いて他の場所からリンクします。
| 置き場所 | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 社内Wiki | 業務中にピンポイントで探す。管理表や議事録からリンクする。複数人で直す | 所有者と確認日を付ける。共有範囲をページ単位で決める |
| Word / PDF | 印刷して渡す。社外に提出する。版を固定したい | 更新されたときに旧版が残る。検索されにくい |
| 表計算 | チェックリスト、引き継ぎ表、担当×作業の一覧 | 本文が書きにくい。人の名前が転記になる |
| スライド | 研修で説明する。図解が多い | 業務中に探すには向かない。Wiki から参照する形に |
実務では、Wiki を正本にして、研修用のスライドや印刷用の PDF は Wiki から参照する形が扱いやすいです。Wiki に置く利点は、手順の中から管理表や依頼フォームにリンクでき、逆に管理表の行から手順に飛べることです。「読む場所」と「作業する場所」が1つになると、マニュアルは開かれ、開かれるから直されます。この考え方は ナレッジ共有が定着しない理由 で詳しく書いています。
ChordOne Note で社内マニュアルを運用すると?
手順書はページに、マニュアル一覧はデータベースに置き、所有者列は従業員名簿を参照し、確認日の通知をオートメーションで届けます。手順の中から依頼フォームや管理表にリンクでき、読む場所と作業する場所が1つになります。
ChordOne Note では、ページの本文に見出し・番号付きの手順・チェック項目・画像を置けます。「ひな形」から「手順」を選ぶと、手順書の型で書き始められます。長いマニュアルは、本文で /ページ と入力して子ページに分け、1ページ1トピックを保てます。手順の途中で /データベース と入力すれば、その場に管理表を置けます。
マニュアル一覧はデータベースにし、列の種類を「従業員」にした所有者列、「部署」にした対象部署列、日付型の最終確認日・次回確認日を持たせます。所有者を名簿から選ぶので転記が無く、退職した所有者には打ち消し線が付いて引き継ぎ漏れに気づけます。状態を「要確認」に変えたら所有者にアプリ内・Slack で通知する オートメーション を付ければ、更新は「届いた通知を処理する」作業になります。
共有範囲はページ単位で決めます。全員向けのマニュアルはワークスペース全員に、給与計算のような一部の人だけの手順は「指定した人・部署」に、下書きは「自分だけ」のまま置けます。部署を指定した共有は異動・入社に追従し、管理者であっても非公開ページの本文は読めません。検索は本文の意味で探せるので、「有給の申請方法」で探しても「休暇取得の手順」が見つかります。マニュアルがどの議事録や管理表から参照されているかは バックリンク で確認でき、書き換える前に影響範囲が分かります。
従業員20名までは無料、21名以上は月200円/人です。機能の詳細は 機能ページ、始め方は 導入の流れ をご覧ください。
よくある質問
マニュアルはどのくらいの長さが適切ですか?
1ページ1トピックで、スクロールが2〜3画面に収まる長さが目安です。長くなるなら子ページに分け、親ページを目次にします。
スクリーンショットは全手順に必要ですか?
不要です。ボタンの位置が分かりにくい箇所だけにし、他はボタン名・画面名を文字でそのまま書きます。画面が変わるたびに差し替える負荷を減らせます。
マニュアルを書く時間が現場に無いと言われます。
初版は7割で公開してよい、と伝えてください。質問が来た箇所から直す方が早く使えるものになります。また、質問への回答をそのままマニュアルに書き足す運用にすると、別途書く時間を確保しなくても育ちます。